ABAをかじって二次障害を防ぐ!

 

ABAって?

自閉症スペクトラムの対応として欧米で一定の成果をあげている関わり方です。

訳すと応用行動分析です。

行動分析(Behavior Analysis BA)や、
応用行動分析(Applied Behavior Analysis ABA)は、
日本の臨床心理士資格の求める学問体系とは
異なる考え方の上に存在するものです

アメリカで自閉症、ギフテッド、2eなど
特別教育に関わっている方々は必ず
行動分析BAと応用行動分析ABAを駆使しています
自閉に特化した心理学ですが、ストレス緩和にも応用できます。

意欲的な臨床心理士さんのなかには
この考え方の必要性に気付き
熱心に勉強していらっしゃる方も増えています

日本には
BA ABAの専門家として誰もが認めるような資格は
まだないため
臨床心理士発達障害療育のプロフェッショナルと
考えられがちです

実は
発達障害療育を得意とする臨床心理士というのは
無理矢理ですが例えますと
スポーツ指導が得意な弁護士
絵のうまい国語教師みたいなものと言えます

(口のうまい国語教師ではありません)

要するに、臨床心理士=発達障害対応のプロ、
というわけではなく、必要となる素養もかなり違います

 

本気のABAと弊害

アメリカの大学院で学んだ専門家が、幼児期に、週最低48時間、ABAを行います。


Autism Therapy - ABA

しかし、本格的なABA療育を長期間徹底してしまう弊害もあります

経済損失と、機会損失です

 

お金がすごくかかります

専門家を名乗る時点で、それで生計を立てていくという前提なのですから仕方がありません(不労所得がじゅうぶんにあれば別です)。学費の回収をしなくてはなりませんし、学会、業界全体で協定価格と言いますか、ディスカウントで抜け駆けすると将来の自分の首を絞めることになりますから、既得権益を守る必要があるのです。

 

幼児期にABAを徹底しますと確かに子ども時代の問題行動は激減し
望ましい行動が激増します。これは様々な論文上も私の経験上も明らかなのですが、同時に、多様な価値観の中で未知の課題に対し試行錯誤し、失敗し克服する経験のできる時間もどうしても減ってしまいます


未知の課題がシンプルである幼児期から、試行錯誤と失敗と成功と自己肯定、のサイクルを継続的に数多く経験させなければ、
容赦ない「普通」の世界に合流してから行き詰まりかねません

 

また、ABAでは、良い行動を増やすのに、ほめなどの報酬を用いるのですが、その報酬制度をあまりにも徹底しますと、「他者のほめ、称賛」がないとよい行動ができない、ということにもなると警鐘を鳴らす専門家も多くいます

 

 

個人的には、ABAの専門家は決してダメとは思わないのですが、プロにかかると長期徹底したがるので、グレーには扱いにくいんだよねー高いし。と思っています

 

ABAは不要なのか?

保護者がお子さんを導くスキルを身に付けるのに
プロ向けの学問体系は必要ありません
その子から学びたいという愛情と時間と、少しの知識、少しのおせっかいさがあればじゅうぶんです


子どもに算数を教えるのは数学の専門家でなくてもよいですね
算数が苦手でもいいくらいです

お互いに好感が持てて、算数の便利さを伝えられる人であればじゅうぶんです

 

ある程度精神年齢が上がったら、一方的に教えられることを不愉快に思うようになる子もいますので、教える側はときどき間違えたり謙虚に教わったりしながらぐらいがちょうどよいのです
発達凸凹さんの教育には
「えええ、やだなあという気持ちが分かる」「無理だ、と思ったことがある」、つまり親御さんぐらいがちょうどいいのです

気負う必要はありません

 

 

ABA的な関わりは誤学習予防に不可欠

親御さんは、お子さんの持つ異文化との交流を通して相手の文化を尊重しつつ、郷に入っては郷に従えということを伝えていく立場として重要です。


ポイントは、異なる価値観は、ストレス負荷を下げてからでないとほとんど伝わらないということです。海外旅行先でトラブル続きでは、その国の良さが見えてこないのと似ています。

衣食足りて礼節を知る、ということわざも、衣食に困窮するストレス下では、相手を思いやることはできないと解釈できます。

 

日常生活のストレス負荷を下げるためには、ABA的な関わり方がとても役に立ちます。

ABAは、Aの状況においてB行動が起こり、Cという結果になる、というような分析を行います。誤学習サイクルを見つけ出す考え方として最強なのです。

 

杉山氏によれば、発達凸凹+不適応=発達障害です 

発達凸凹という個性を、嫌われやすい発達障害や二次障害に結びつけるものは、誤学習サイクルであり、

発達凸凹という個性自体には、嫌われる要素は本来ほとんどありません(嫌われる要素を後天的に身に付けることはあります)

 

もしかして発達障害グレーゾーンやちょっと変な子の子育てに大切なのは、ABAや傾聴の専門知識ではなく、誤学習サイクルを防ぐ取り組みであると考えます

 

 

「駄々をこねると要求が通る」「泣くと優しくしてもらえる」「人を叩くと孤独にならずに済む」 は有名な誤学習ですね。

ABAの考え方も広まってきており、こういったシンプルな本がたくさんありますので、親御さんのお子さんがピンとくる部分をピックアップして試してみてほしいと思います。

 

 

こういった本にはほとんど書かれていないので意外かもしれませんが、「いい点を取ればほめられる」「かわいいねとほめられる」「良いことをするとほめられる」これも、度を過ぎると、点数や美貌、善悪二元論的な正義といった「多様な価値観におけるひとつの価値にすぎないもの」へのこだわりが高まりすぎ、誤学習となります。

「きょうだいケンカをすると親が相手をしてくれる」

「食事を減らせばおやつをたくさん食べられる」

「勉強しなければ、勉強して損したと思わないで済む」

「学校に行かなければ家でひとりでゲームができる」こんな誤学習もあります。

このように、誤学習の罠はあちこちにあるので、それを見つけて防ぐために、ABAの考え方はとても役に立ちます。

 

 

correct-me.hatenablog.com

 以前このエントリにも書きましたが、正義と悪の二元論的な価値観は、発達凸凹にとって、二次障害にもつれ込ませる負のエネルギーに満ちています。誤学習を防ぐための工夫は、愛されキャラに育てるにあたって親子のテーマです。なんちゃってABAでじゅうぶんですので、誤学習からの二次障害を防ぎましょう。